2019年 10月 27日 ( 1 )

福井・富山編(43):丸岡(16.3)

 気をつけて急な梯子を下り、それでは坂井市立丸岡図書館を訪れることにしましょう。途中に「日本一短い手紙」を列記した掲示があり、その近くには「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ 一筆啓上茶屋」という看板がありました。
c0051620_18403576.jpg

 どこかで聞いたことがあるなあ、この手紙。いま調べてみると、この手紙は、徳川家康の忠臣・本多作左衛門重次が、長篠の合戦(1575)の折、陣中から妻に宛てて送ったものだそうです。短い文章の中に大事なことが簡潔明瞭に言い尽くされているので日本一短い手紙というわけです。なお「お仙」とは重次の息子である仙千代、後の初代丸岡藩主になる本多成重のことです。
 そして日本で一番古い丸岡城に日本一短い手紙文があることを全国に知ってもらうとともに、活字やメールでは伝わらない本物の手紙文化の復権を目指すという目的で、1993年に始まったのが全国初の手紙のコンクール、一筆啓上賞というわけです。後学のために、2018年度の大賞のうち、私が気に入った作品を紹介します。お題は「先生」です。
「校長先生」へ
僕の事、知ってますか? 僕は全体の中の一人です。いつか見つけてみて下さい。
 うわお、永田くん、鋭い。All in all you're just another brick in the wall. 子どもたちを、壁を作るための煉瓦にしようとする教育を痛烈に皮肉るピンク・フロイドの「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」を思い出しました。そして校長が全生徒のことを知らない/知り得ない、つまり十分な数の教員を配置して小規模な学校をつくろうとしない、教育予算を出し惜しむこの国のお寒い現状を見事に言い当てています。A-35は爆買いするのにね。
 生徒を管理・統制するために置かれた国家権力の端末、それが日本の教育における校長の役割なのでしょうね。でも違うやり方を採っている国もあるということは銘肝しましょう。以前に読んだある本にイタリアの小学校の校長先生へのインタビューがあり、「どうやって校長を決めるのか?」という質問に対して「教員が互選で決める」と答えていました。また「最も重要な教育の使命は?」という質問に対して、彼は「地域との連帯」と答えていました。嗚呼なんという高潔な志であることよ。日本の校長先生に同じ質問をしたら、きっと「偏差値の高い上級学校に一人でも多くの生徒を送り込むこと」とか「新聞ざたになるような/教育委員会に睨まれるような事件を起こさせないこと」と答えそうな気がします。
 気が滅入ることばかり書いて申し訳ない、永田くん。せめて励ましの意を込めて、西村伊作の言葉を贈ります。
 われわれの思想を、自由に実現することのできる文化学院が生まれるのを真によろこんで、まじめな芸術の精神をもってやろうとしている。
 芸術に生きる。強いない。画一的に人をつくらない。各々の天分を伸ばす。不得手なものを無理にさせない。機械的な試験をしない。競争的に成績を挙げさせない。
 身体と精神を損ずることのないようにする。
 生徒のみの教育ではなく、一般教育界の模範となり、参考となるように努める。
 小さくて善い学校。素人がよい。
 魯迅だったら、藤野先生にどんな短い手紙を出すでしょうか。
by sabasaba13 | 2019-10-27 08:10 | 中部 | Comments(0)