2019年 11月 11日 ( 1 )

福井・富山編(53):高岡へ(16.3)

 それでは福井へ戻り、高岡へと移動しましょう。京福バスの永平寺ライナーに乗ると、三十分ほどでJR福井駅に到着しました。駅ビルにあった「おそばだうどんだ越前」で、ご当地B級グルメのソースかつ丼と焼き寿司をいただきました。特急「サンダーバード」の顔はめ看板を撮影し、北陸本線に乗って金沢を目指します。
c0051620_10511220.jpg

 さて、これで福井県とはお別れですが、最近気になるニュースが飛び込んできました。福井新聞(2019.3.11)の、"学力日本一の背景に「教員の犠牲」"という記事です。長文ですが引用します。
 午後8時を過ぎても、ほとんどの教員が職員室に残っている。残業が毎月100時間を超えるという福井県内の30代公立中学校教員は「現場の教員はタイムカードを切ってから仕事を続けたり、家に持ち帰ったりしている。自分が割りを食う分には文句を言われない」と話す。
 昨年9月の福井県教委の調査によると、県内公立中学校教員の平均勤務時間は平日1日当たり10時間51分。「休憩」の1時間を除いているが「休憩なんて全く取れない」。実働は12時間近いが、それでも2年前に比べ31分短くなった。土日の部活動を含めて月80時間以上残業する教員は26・8%。2年前から19・4ポイント減った。
 県教委は今年2月に働き方改革の方針を策定し、2021年度までに残業80時間超の教員ゼロを目標に掲げた。この教員は「県教委の方針に『これはしなくていい』という具体的な内容はない。学校の管理職も『早く帰れ』と言うだけで仕事の量は減らさない。調査の数字は実態を表していない」と淡々と語る。

 福井県内の公立中学校で働く県外出身の30代教員は、「福井の教育は教員の犠牲で成り立っている」と考えている。さらに「宿題をやり遂げる子どもの忍耐と家族の叱咤激励でも成り立っている」と続けた。
 「福井に比べ、宿題があまりに少なくて驚いた」。夫の転勤で子どもを県外の公立中学校に通わせたことがある福井市の会社員女性(35)は「福井に戻ってからは、子どもに全部やらせるのが大変」とこぼす。

 宿題の多さは、全国学力テストで福井の子どもたちが上位を維持する要因の一つとされる。特に中学では、学年共通の宿題に加え、各教科担任からも出される。福井県義務教育課の浦井寿尚課長は「宿題は教員が丸つけや添削をする必要があり、出せば出すほど教員にも負担になる」として、宿題の多さは「学習塾に通わなくても学びを定着させてあげたいという教員の熱意の表れでもある」と話す。
 現場には疑問もある。県外で勤務経験がある30代公立中学校教員は「宿題を全部提出できる子どもが基準で、個々の能力や特性に応じた内容や量になっていない」と指摘する。
 いやはや、福井県では学校のブラック化が相当苛烈な領域にまで入っているようです。それにしても、教員を、保護者を、何よりも生徒をここまで追い詰める全国学力テストって何なのでしょう。測定可能な断片的知識を生徒たちに詰め込んで、全国規模で生徒同士を、教員同士を、学校同士を、自治体同士を競争に巻き込むということだと思います。学力とは、本来「騙されない力」「嘘を見抜く力」「まともな市民として考え行動する力」だと考えますが、そうした力は一顧だにされていないようです。要するに政治家・官僚・財界など管理者(administrator)のみなさんは、子どもたちがまともな市民になっては困る、従順な国民になってほしいと願っているのでしょう。
 それでは管理者にとって、全国学力テストにはどのような利点があるのか。まず財政面です。テストの結果が思わしくない学校の予算を削る、担当した教員の給与を削る。数値という確固たる基準を根拠にするわけですから、反論・抵抗はきわめて難しいですね。
 次に、生徒を勉強嫌いにさせる。無味乾燥な断片的知識を競い合わせれば、嫌気がさすでしょう。大人になってテストがなくなれば必然的に勉強もしなくなる。問題は誰かがつくってくれるのではなく、自分でつくり、自分で学び考えて解決を見つけるのだということを知らない大人になってくれるでしょう。より良い社会を築くために、勉強は必要で、重要で、かつ喜ばしいものなのに。
最後に、生徒たちを多忙にさせる。スマートフォンと部活動と全国学力テストという"三種の神器"が揃えば、完璧です。多忙にさせることによって、読書の時間や考えるゆとりや政治への関心を奪えば、自立した市民ではなく利己的な消費者になるための素地をつくれます。
 香港の雨傘運動のリーダーの一人、周庭(アグネス・チョウ)氏が、初来日後のフェイスブックに次のように書き込まれたそうです。
 日本はかなり完璧な民主政治の制度を持っているが、人々の政治参加の度合い、特に若者のそれはかなり低い。日本に来て、私は初めて本当の政治的無関心とは何かを知った。
 香港では、強権を批判する約200万人参加のデモが起こり、日本では総選挙において半数近くの有権者が棄権する。日本人の政治参加の低迷と政治的無関心には、周庭氏をはじめ香港の方々はさぞ歯がゆい思いでしょう。民主政治の制度がある程度整っているのに、それを活用しない日本人。その理由のひとつが、この全国学力テストをはじめとする教育環境にあると考えます。政治に関心を持つな、政治運動に参加するな、政治的中立を保て[=体制を批判するな]、そんな囁きや有形無形の圧力が、日本の学校には満ち満ちているのではないかな。
by sabasaba13 | 2019-11-11 06:57 | 中部 | Comments(0)