赤坂プレスセンター

 昨日、「赤坂プレスセンターと横須賀基地」という記事を上梓しましたが、赤坂プレスセンターの現状についての詳細な報告がありましたので紹介します。

『東京新聞』(25.8.11)
米軍ヘリは頭上スレスレを通り港区の基地へ 戦後80年の今も残る「特権」… 放置された空と土地の問題とは

 バリバリバリ…。7月17日午前11時過ぎ。犬を連れた人やランナーが行き交う東京都立青山公園(港区)の一角を突然、ごう音が包み、風圧で木々がざわめいた。
 ビルの間を縫うようにして現れたのは「US AIR FORCE」と機体に書かれた白い軍用ヘリコプター。半分開いたドアから軍服姿の男性が銃を携える。米軍基地「赤坂プレスセンター」の地上ヘリポートと隣接するこの一角で日常的に見られる光景だ。
 近くで園児を散歩させていた保育士の女性(66)は「ヘリは頭上すれすれを通った。大きな音が苦手な子もいるので、あわてて『ヘリコプターの音だよ』と声をかけた」と話し、身をすくめる。
 ヘリポートと目と鼻の先にある遊具コーナーや涼しげな木陰は、都心では貴重な子どもたちの遊び場だ。この日の午前だけでも2つの幼保施設が利用した。夕方にはいつも、ボールで遊ぶ小中学生らでにぎわう。女性は「事故が起きないか不安というのが率直な気持ち。こんな所に基地はない方がいい」とつぶやいた。
 記者が本社ヘリに乗って上空から基地を確認すると、異様さはより際立って見えた。六本木ヒルズや国立新美術館などがひしめく都心の一等地に、ぽっかりと広がる約2万7000平方メートルの空間。ヘリポート脇には兵舎なども立つ。
 米軍の準機関紙の事務所があることから「赤坂プレスセンター」と呼ばれている。米軍が1945年に旧日本陸軍の駐屯地だった土地を接収し、今日まで占有を続けている。
 米大使館や外務省にも近く、在日米軍横田基地(東京都福生市など)からの移動に適し、トランプ大統領ら要人も頻繁に利用する。米軍は公式ホームページで、軍関係者や家族が滞在できる基地内の兵舎を紹介し「にぎやかなナイトライフスポットも徒歩圏内だ」と利便性をうたっている。
 基地の問題は、米軍と東京都の間にあつれきも生んできた。日米は1983年、都が米軍ヘリポートの地下に都道トンネルを建設し、工事中は青山公園の一部(約4300平方メートル)を臨時ヘリポートとして米軍に貸し出すことで合意。工事後は臨時ヘリポートを元の公園に戻す約束だった。
 ところが1993年に工事が終わった後も、米軍は臨時ヘリポートを手放さず、利用を継続。1999年に都知事となった石原慎太郎氏も記者会見で「屈辱的な状態が続いている」と不満をあらわにした。交渉が動いたのは2007年。米軍はヘリポートに接する別の土地の返還を提案してきた。
 その土地は、貸している土地より400平方メートルほど広いものの、米軍も使っていなかった基地北端の細長い部分。公園エリアとの接続も悪かったが、都は受け入れざるを得なかった。ヘリポートは返還どころか、逆に拡張されてしまった。
 返還された土地は2023年、遊具つきの芝生広場に整備されたが、米軍の意向により、今でも市民が入れるのは午前9時から午後4時半までに限られる。近くの男性(60)は「暑いので朝や夕方以降に訪れたいのに。なぜ制限が続いているのか」と憤る。
 米軍の「特権」は土地の占有にとどまらない。米軍機は、在日米軍の特権的地位を定めた日米地位協定に基づき、航空法の規制の大半が適用除外されている。日本のヘリなら違法となるような都心での低空飛行も米軍機は日常茶飯事だ。
 羽田空港の着陸機が都心上空を降下する「羽田新ルート」の下を米軍ヘリが通り抜けるため、事故を心配する声もある。今年1月には米首都ワシントン近郊で、米軍ヘリが近くの空港に向かっていた小型旅客機と空中衝突し、67人が死亡する事故が起きている。
 都と港区は長年、事故の危険性や騒音の問題を訴え、基地の返還を求めるが、米国は今年3月、在日米軍司令部を作戦指揮権を持つ「統合軍司令部」へ移行する準備として、防衛省との連携用の部署を赤坂プレスセンターの中に新設した。事実上の基地機能の強化で、恒久化されるのではとの懸念は拭えない。
 中谷元・防衛相は7月の記者会見で「施設の新設や大規模改修、騒音を出す装備品の配備も予定されておらず、基地負担の増加につながらない」と主張。「都心への要人輸送や後方拠点の役割を果たしている施設であり、現時点において返還は困難だ」と容認する方針を強調した。
 港区の清家愛区長は東京新聞の取材に、統合軍司令部への移行について「基地の恒久化につながり、撤去が遠のくことを懸念している」と書面で回答。日米の合意通りに基地の返還が進んでこなかった経緯にも強い不満を示し、今後も返還を求めていく方針だ。
 米軍は都心の空に、さらに広範な問題ももたらしている。1都9県にまたがる空域は日本ではなく米軍が管制を行う「横田空域」。国内なのに進入時は米軍の許可が必要で、民航機の多くは空域を避けて遠回りを余儀なくされている。
 防衛省幹部は「自衛隊機でさえ米軍の許可が要る。屈辱だ」と漏らす。戦後80年でも状況は変わらず、政府が米国に強く返還を求める姿勢は見られない。
 目につきにくく、これまで置き去りにされてきた「都心の基地」と「空の主権」をどう考えるべきか。大東文化大の川名晋史教授(安全保障)は「人口密集地の低空をヘリが飛んでいる。いつ重大事故が起きてもおかしくない」と指摘。「米軍基地や空域の問題は戦争の名残。戦後80年の今こそ、私たちがわが事として考えるべきテーマだ」と問題提起する。(大野暢子)

 首都に厳然として存在する米軍基地、米軍と米軍兵士の傍若無人な振る舞いをあらためて胸に刻みましょう。そしてこうした状況は、沖縄を筆頭に日本各地に存在することも。
 くりかえします。アジア諸国との信頼関係の欠落とアメリカへの従属、その庇護の代償として首都圏を含む全国各地に米軍基地を提供し、日米地位協定により米軍の治外法権的行為を容認する。この現実をまず認めることから始めましょう。
 そして日本の新しいリーダーは、この軍事基地のひとつから喜々として飛び立ち、そのひとつに喜々として降りたち、現状に自発的に屈従していることも。

 追記です。本日の『東京新聞』(25.11.8)でもこの問題を取り上げていました。

<ぎろんの森> 東京都心にある外国軍施設

 高市早苗首相と与野党との本格的な国会論戦が始まりました。就任直後の「ご祝儀相場」もあり、報道各社の世論調査で内閣支持率は60~80%と高水準ですが、衆参両院で少数与党という厳しい状況に変わりはありません。
 国民の暮らしを痛めつけている物価高騰に、適切な対応策を講じられるかどうかが政権の命運を握っています。
 政権発足直後は、米韓中との首脳会談やアジア太平洋経済協力会議(APEC)などでの首脳会議など外交日程がめじろ押しでした。ただ、トランプ米大統領を日本に迎えた高市氏の振る舞いには、賛否両論があるようです。
 本社にも読者から「高市首相がトランプ氏と会い、米空母上で跳びはねて喜んでいたが、はしゃぎ過ぎだ。じっくり考えて行動、発言しないと米国に主導権をとられてしまう」と批判的な意見の一方、「日本は軍事的、経済的に自立しない限り、米国に追随せざるを得ない。国力の差を考えるとトランプ氏のご機嫌をとるしかない」との肯定的な意見も届いています。
 トランプ氏来日であらためて気付かされたのは、東京都心にある米軍施設「赤坂プレスセンター」の存在です。
 東京新聞の過去の記事を調べると、日本の首相がここからヘリコプターに乗ったのは1999年の小渕恵三氏以来です。このときは自衛隊ヘリでした。2002年に完成した新しい首相官邸にヘリポートが併設されたため、この施設を使わなくなりました。
 ですから、日本の首相が、安全保障条約を結ぶ米国とはいえ、都心の外国軍施設から神奈川県・横須賀港に停泊する米空母まで、米大統領とともに、米軍ヘリで移動したことは極めて異例です。
 問題はこの場所が終戦までは旧日本軍の敷地で、東京都や港区が長年、全面返還や撤去を求めているにもかかわらず、米軍に接収されたままだということです。離着陸する米軍機は日本の航空法が適用されず、住民らからは騒音や低空飛行、事故への不安が寄せられています。
 占領時代の名残とも言えるこの場所から、高市氏はどんな気持ちで飛び立ったのでしょう。トランプ氏と良好な関係を築くことで頭がいっぱいだったとしても、この場所が意味するものを決して忘れるべきではありません。(と)

# by sabasaba13 | 2025-11-08 06:48 | 鶏肋 | Comments(0)

赤坂プレスセンターと横須賀基地

 トランプ大統領と高市首相が大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」に同乗をして、特別な親密さを演出したことが話題となりました。しかし、このヘリが、赤坂プレスセンターから飛び立って横須賀基地に到着したことに着目したメディアは、管見の限りありませんでした。
 この両者は言うまでもなく米軍基地、しかも首都および首都圏にある米軍基地です。他国の軍事基地が首都圏に存在する、これは国際的常識ではあり得ません。それなのに何故、日本では横須賀、横田、厚木、座間といった首都圏を制圧するような米軍基地が置かれているのか? 考えるに値する重要な問題です。それについて考えるヒントとなる一文を紹介します。『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治 集英社インターナショナル)から引用します。

 このようにドイツはさまざまな努力の結果、『国際連合憲章逐条解説』にあるように、すでに1970年代、「敵国」としての位置づけを事実上、脱することに成功していました。そうした歴代の首相たちの努力があったからこそ、第六代首相となったヘルムート・コール(キリスト教民主同盟)は、冷戦終結のチャンスをとらえて1990年9月12日に、「ドイツの戦後処理に関して責任をもつ」戦勝四カ国(米英仏ソ)と東西ドイツのあいだで事実上の「講和条約」(通称「2プラス4条約」)を結び、敗戦国としてのなごりをすべて清算することができたのです。そして翌月10月3日のドイツ再統一、さらには1993年11月1日のEU創設へと突き進むことができたのです。
 1990年に結んだ「2プラス4条約」にもとづき、米英仏ソの駐留軍はすべて1994年までにドイツから完全撤退していきました。現在ドイツに残っている米軍は、基本的にNATO軍としての制約のもとに駐留しており、そのドイツ国内での行動にはドイツの国内法が適用されています。
 こうして日本と同じく第二次大戦の敗戦国だったドイツは、長く苦しい、しかし戦略的な外交努力の結果、戦後49年目にして、ついに本当の意味での独立を回復することができたのです。
 それにひきかえ日本は、ドイツのように周辺諸国に真摯に謝罪し、「過去の克服」をおこなうのではなく、戦後まもなく成立した冷戦構造のなか、米軍基地の提供とひきかえに、外交と安全保障をすべてアメリカに任せっきりにして、国際社会への復帰をはたしました。講和条約に通常書かれるはずの敗戦国としての戦争責任も明記されず、賠償金の支払いも基本的に免除されました。そして過去に侵略をおこなった韓国や中国などの周辺諸国に対しては、贖罪意識よりも、経済先進国としての優越感を前面に押し出すようになり、戦後70年のあいだ、本当の意味での信頼関係を築くことが、ついにできませんでした。
 その結果、日本は世界でただ一国だけ、国連における「敵国」という国際法上最下層の地位にとどまっているのです。日本全国に駐留し、国内法を無視して都市の上空を飛びまわる在日米軍がその証しです。いまだに軍事占領がつづく沖縄と、横田、厚木、座間、横須賀など、首都圏を完全に制圧する形で存在する米軍基地、そして巨大な横田空域(ラプコン)がその証しです。そんな国は世界じゅう探しても、日本以外、どこにも存在しないのです。
 アメリカに従属していれば、その保護のもとで「世界第三位の経済大国」という夢を見ていられます。しかし、ひとたびアメリカから離れて自立しようとすれば、世界で一番下の法的ポジションから、周辺国に頭を下げてやり直さなければならない。それはまさに戦後の西ドイツが歩んだ苦難の道そのものです。
 いまさらそんな大変なことはやりたくないし、そもそもどうやっていいかわからない。だから外務省が中心になって、米軍の駐留継続をみずから希望し、ありもしない「アジアでの冷戦構造」という虚構を無理やり維持しようとしている。それが現在の「戦後日本(安保村)の正体」なのです。(p.242~2)

 もう言葉もありません。アジア諸国との信頼関係の欠落とアメリカへの従属、その代償として首都圏を含む全国各地に米軍基地を提供し、日米地位協定により米軍の治外法権的行為を容認する。この現実をまず認めることから始めましょう。
 そして日本の新しいリーダーは、この軍事基地のひとつに喜々として降りたち、現状に自発的に屈従していることも。

# by sabasaba13 | 2025-11-07 07:04 | 鶏肋 | Comments(0)

レディーススーツを着た関東軍

 高市早苗首相の素振りに関する、インターネットやSNSでの毀誉褒貶が喧しいですね。一方で「媚びている」「はしゃぎすぎ」「卑屈」といった批判、他方でそれに対する反論。
 やれやれ、私にとっては素振りなどは基本的にどうでもいいことです。問題にしたいのは、首相として将来の日本をどのような国にしたいのかというヴィジョンと、そのための設計図と海図です。それさえしっかりしてくれれば、媚びようがはしゃごうが卑屈であろうが微笑もうが踊ろうが、どうでもいいことです。
 さて、高市首相のヴィジョンは何か。そしてどのような海図を描いているのか。うーん、説明してくれないので、全くわかりません。一つだけ明らかなのは、軍事費(防衛費)を大幅に増やそうとしていることです。『しんぶん赤旗』(25.10.25)から一部引用します。

主張 高市首相所信表明 自民党政治の転換こそ必要だ
 「衣の下に鎧」―。高市早苗首相が国会で初めて行った所信表明演説を聞いて頭に浮かんだ言葉です。
 「鎧」の最たるものは、2027年度に軍事費とその関連経費を合わせ国内総生産(GDP)の2%にするという政府の目標を前倒しし、今年度中に実現するというものです。加えて、この目標を定めた安保3文書を来年中に改定することを目指し、検討を開始するとしました。
 一見、その重大さは抽象的な表現で隠されています。
 安保3文書は22年に閣議決定されました。同年度の軍事費は5・2兆円(米軍再編経費など除く)。GDP比2%は11兆円となり、軍事費をおよそ2倍にするという大軍拡計画です。それを2年も早く実現するというのです。
 高市首相はそのために補正予算を組む意向を明らかにしました。防衛省によると、今年度の軍事費と関連経費を合わせると9・9兆円(GDP比1・8%)に達します。補正予算に盛り込む軍事費は1・1兆円に上ることになります。
 しかも、安保3文書の来年中の改定は、軍事費のGDP比2%を達成した後も大軍拡を続けることが狙いです。
 今年2月、石破茂首相(当時)はトランプ米大統領との会談で、27年度にGDP比2%を達成した後の28年度以降も「防衛力を抜本的に強化する」とし、軍事費の大幅増を約束していました。安保3文書の改定はそれをいっそう加速するものです。
 こうした大きな問題にもかかわらず、首相はなぜ前倒しするのか説明を避けました。「さまざまな安全保障環境の変化」というだけです。
 トランプ米政権は日本に対し、対中国軍事戦略の最前線に立たせるため、軍事費をGDPの3・5%にするよう求めています。今年度のGDPの見通しで計算すれば21兆円超です。今回の表明が、週明けに来日し、首相と会談予定のトランプ大統領への土産であることは明らかです。
 首相は、中小業者や医療機関への支援策など聞こえのいいさまざまな物価高対策を並べました。しかし、大軍拡予算が暮らしを守る予算を大きく圧迫することは避けられません。(以下略)

 そして見逃せないのが、防衛省が設置した「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」が、武器輸出ルールの緩和や原子力潜水艦(原潜)の保有、2023年度からの5年間で43兆円とされた防衛費のさらなる上積みを求める報告書をまとめたことです。『週刊金曜日』(№1541 25.10.17)から引用します。

半田滋の新・安全保障論 防衛の「有識者」による安倍氏への「献辞」

 防衛省が設置した「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」が武器輸出ルールの緩和や原子力潜水艦(原潜)の保有、2023年度からの5年間で43兆円とされた防衛費のさらなる上積みを求める報告書をまとめた。
 この手の会議は思惑通りの結論を出すメンバーを選び、議論を尽くした体裁をとり狙い通りの結論を得るのが常套手段とはいえ、その顔ぶれにはあ然とさせられる。
 企業献金を復活させ、安倍晋三内閣を全面支援した榊原定征(さだゆき)元経団連会長を座長とし、憲法解釈を変更して集団的自衛権腰を解禁すべきとの報告書を安倍首相に提出した安全保障有識者懇談会の座長代理を務めた北岡伸一元東大教授がここでも座長代理だ。
 ほかに安倍首相の改憲案を掲載した読売新聞グループ本社社長、アベノミクスの旗振り役を務めた元日銀副総裁、原発の建て替えを主張した大学教授らが顔をそろえる。亡くなった安倍氏の考えに近いメンバーが集まり、集団的自衛権行使の解禁を盛り込んだ安全保障関連法が10年前に成立した日と同じ9月19日に公表したのだから報告書は安倍氏への「オマージュ(献辞)」と考えて間違いない。
 政府側は、元防衛相、元防衛事務次官、前幕僚長が名前を連ね、その下の部会には防衛産業最大手の三菱重工業名誉顧問(会議招集時には会長)がいる。利益相反する武器の発注側と受注側が一緒になって防衛費増を訴えるのだから茶番劇でもある。
 「平和国家」として紛争を助長しないとの国是により定めた武器禁輸を見直し、武器輸出を解禁した安倍首相の考えを引き継ぎ、さらに発展させるべく、報告書は殺傷力のある武器は輸出しないとの運用方針を見直し、友好国であれば紛争当事国であっても輸出すべきだと提言した。
 「次世代の動力を活用する」との婉曲な言い回しで原潜の保有にも言及した。原潜を持つには、原子力の平和利用を定めた原子力基本法の改定が必要になるが、より大きな懸念は、原潜保有国は米英仏露中印といった核保有国であり、いずれも核ミサイルを搭載しているという点だ。
 生前、安倍氏は米国の核兵器が配備され、その配備国が使用に協力する核共有について「議論をタブー視してはならない」と主張した。報告書は核保有には触れていないものの、「核の脅威を直視した抑止力を我が国としてどのように構築していくかを真剣に検討する必要がある」と含みを残した。
 報告書を受け取った中谷元防衛相は「提言を真摯に受け止め、防衛力の抜本的強化をさらに進めていくにあたり大いに活用したい」と述べ、さらなる軍事大国化を目指すとした。報告書を読み、自民党総裁選の結果を見て、あらためて思った。死してなお、安倍氏の影響力はこれほど強いのかと。(p.57)

 高市首相が好んで使用する枕詞「防衛力の抜本的強化」の具体的な内実であり、彼女は間違いなくこの提言を粛々かつ喜々として実行するでしょう。

 というわけで、高市首相が熱心にやろうとしていることがいくつか見えてきました。とにかく軍事費(防衛費)をひたすら増やすこと。アメリカ製の兵器を爆買いしてトランプ大統領の歓心を買い、己の権力基盤を盤石なものにすること。および日本の軍事(防衛)産業から兵器を爆買いして、見返りに自民党への政治献金をいただくこと。
 武器輸出ルールを緩和して殺傷力のある武器を輸出して軍事(防衛)産業が稼げるようにすること。これも自民党への政治献金へとつながります。なお1976年5月14日衆院外務委員会で、当時の宮澤喜一外相は「わが国は武器の輸出をして金を稼ぐほど落ちぶれていない。もう少し高い理想を持った国として今後も続けていくべきだ」と述べました。言うなれば、これからの日本を「武器輸出して稼ぐほど落ちぶれ、高い理想を捨てた国」にしたいわけですね。(『週刊金曜日』 №1525 25.6.20 p.48)
 そして敵基地攻撃能力(反撃能力)を持つミサイル垂直発射装置(VLS)搭載の原子力潜水艦の保有。非核三原則を撤廃して核ミサイルを搭載することも視野に入れているのかもしれません。これも日本の軍事(防衛)産業の莫大な利益となり、自民党への政治献金の爆増へとつながります。

 以上、ヴィジョンも海図も提示しない高市首相ですが、アメリカと日本の軍事(防衛)産業に莫大な利益を供与することによって、己の権勢を保持し、自民党の組織利益をはかることが見えてきます。しかし絶対に忘れてはいけないのが、その財源をどうするのか、です。これについても氏は全く説明責任を果たしていないので、想像するしかありません。私が考えるに、消費税の大幅アップと、社会保障・教育・防災・文化関連予算の大幅削減でしょう。アメリカと日本の軍事(防衛)産業がぶくぶくに肥え太って、われわれ庶民は馬車馬のように働かされながら生活苦と貧困に喘く。だとしたら許し難いヴィジョンですが、知ってか知らずか、高市氏の支持率は68%です。(※朝日新聞調査)

 そして最も重要な点は、莫大な軍事費(防衛費)を使って強大な軍隊(自衛隊)を作る目的はなにかです。政治家・官僚がよく「厳しい国際環境」という表現を使いますが、湯水のようにわれらの税金を注ぎ込んで強大な軍隊(自衛隊)をつくらねばならぬほどの「厳しさ・危うさ」なのか具体的な説明はありません。台湾有事? 前川喜平氏がおっしゃるとおりです。

『東京新聞』(25.11.2)
<本音のコラム> 厳しさを増す安全保障環境? 前川喜平(現代教育行政研究会代表)

 10月30日の米中首脳会談。トランプ大統領は事前に「台湾の話もする」と言っていたが、結局何も言わなかった。米国インド太平洋軍司令官が「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性」に言及してから4年半。そんな緊張感は全くない。
 31日の日中首脳会談。高市早苗首相と習近平国家主席は「戦略的互恵関係の推進」と「建設的で安定的な関係の構築」で一致した。「台湾海峡の平和」は付け足し程度に触れただけ。「台湾有事は日本有事」と言ってきた高市氏にしてはずいぶん弱腰だ。日米首脳とも、本気で台湾有事を心配してはいないのだ。
 防衛費の増額に邁進する政府は、2013年の国家安全保障戦略以来一貫して「我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している」と言い続けてきた。12年も厳しさが増し続けたのなら、今ごろは一触即発の危機になっているはずだ。つまり「厳しさを増す安全保障環境」は防衛費増額の口実に過ぎないのだ。
 24日の所信表明で高市首相は、防衛費の対GDP比2%水準を今年度中に前倒しすると表明。28日の日米首脳会談でも防衛費の増額を約束した。3.5%(21兆円)に引き上げる密約もありそうだ。こんな途方もない大軍拡が犠牲にするのは庶民の生活だ。
 その目的は何なのか? 日米の軍事産業を儲けさせること以外ない。

 さらに気がかりなのが、強大な軍隊(自衛隊)をつくった結果、起きる事態です。他国をびびらせて日本への攻撃をためらわせるための抑止力の強化につながる? そのような超楽観的な見方に与することはとてもできません。
 第一に、「ATMと鉄砲玉」で述べたように、強力な武器を使って中国を攻撃し多大な犠牲を引き受けてくれる「アメリカのために体を張る鉄砲玉」として使い捨てられる危険です。
 第二に、日本の軍備増強が、抑止ではなく、戦争リスクにつながるという危険です。『従属の代償 日米軍事一体化の真実』(布施祐仁 講談社現代新書2754)から引用します。

 私も、自衛のための必要最小限の軍備は必要だと考えています。しかし、軍備増強には抑止力を高めるという「効能」だけでなく、重大な「副作用」もあるという事実を忘れてはなりません。
 中国の台湾侵攻を抑止する目的で日米や台湾が軍備を増強すれば、台湾の独立と米国の干渉を絶対に認めないと主張している中国もこれに対抗して軍備を増強します。際限のない軍拡競争となり、軍事的緊張は高まるばかりです。軍事的緊張が高まれば、ナイが警鐘を鳴らす「計算違いによる衝突」のリスクも増大します。
 このように、抑止力を高めるための軍備強化がかえって戦争のリスクを増大させてしまう事象を、「安全保障のジレンマ」と呼びます。(p.217)

 というわけで、高市首相の軍事費(防衛費)大幅増額には反対です。アメリカと日本の軍事産業を太らせ、自民党が多額の政治献金を受け取り、われわれ庶民を貧窮へと追い込み、自衛隊員がアメリカの鉄砲玉として使い捨てられ、「安全保障のジレンマ」として戦争リスクを高める。とても看過することはとてもできません。
 想像ですが、高市首相は戦争をしたいとは考えていないと思います。ただ、起きたら仕方ない、ま、その時はその時だと、軽く考えているのではないかな。「平和はどうするのか」という古賀誠元幹事長の真摯な問いかけにきちんと答えようとする姿勢は見られません。

 己の権勢保持と自民党の組織利益のために、戦争を招き寄せる高市早苗首相。まるで…

 レディーススーツを着た関東軍

# by sabasaba13 | 2025-11-06 07:04 | 鶏肋 | Comments(0)

京都錦秋編(13):東華菜館(19.11)

 それでは中に入りましょう。まずは噂の日本最古のエレベーターに乗って上階へ、係の方が操作をしてくれましたが鉄製のシャッターを手で開け閉めするのですね。そのレトロさは感動ものです。
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 店内は木調が主体のスパニッシュな雰囲気で、エキゾチックな気分にひたれます。
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 テーブルにつき5000円のコースを注文しました。味は…まあお値段相応ですね、それなりに美味しうございました。
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 トイレに行くと、磨りガラスに描かれた男女表示がこれまた超弩級のレトロ、人目をしのんで撮影してしまいました。
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 会計を済ませて四条大橋を渡り、京阪本線の祇園四条駅から三条駅へ、市営地下鉄東西線に乗り換えて山科駅に到着。ほんとうにアクセスの便が良いホテルです。地下街にある気になる喫茶店「ビアンカ」は、日曜日なので本日はお休み。明日の月曜日は午前九時より営業とのことでした。近くのコンビニエンス・ストアで買い物をして部屋へ。テレビの気象情報を見ると、明日は確実に一日雨です。「天下無双の晴れ男」もここまでか… 明日の予定について山ノ神と打合せ、とりあえず朝寝坊をして、地下にある「ビアンカ」でモーニングをいただき、チェックアウトぎりぎりまで部屋でうだうだしましょう。その後はどうしよう。山ノ神より、お土産購入に一時間ほど使いたいとのリクエストがありましたので予定に組み込みましょう。美術館か博物館で時間をつぶすという手もありますが、山ノ神にスマホで京都美術館情報を調べてもらうと、やはり月曜日なのでほとんど休館です。うーむ、沈思黙考。よろしい、雨がひどければ東映太秦映画村立命館大学国際平和ミュージアムへ行って雨を凌ぎましょう。小雨なら、嵐山・嵯峨野かな。スマホで調べてもらった京都新聞紅葉情報によると、宝筐院が本日見ごろです。宝厳院天龍寺常寂光寺も落葉間近なので少しは残っているかな。なお二尊院は落葉です。
 それにしても雨だとつらいなあ、せめて曇りになってくれないかなあ。まあ駄目でもともと、万事に御利益のある呪文を唱えておきましょう。

 ニンドスハッカッカ、マ、ヒジリキホッキョッキョ

# by sabasaba13 | 2025-11-03 05:55 | 京都 | Comments(0)

京都錦秋編(12):東華菜館・南座(19.11)

 それでは叡山電鉄の一乗寺駅まで歩いていきましょう。その途中にこんなポスターがありました。

宮座座員募集 八大神社
 古来より八大神社を支える宮座組織、その担い手を求めています。
 伝統ある一乗寺の氏神さんの神事や行事に奉仕し、地域の活性化を図り、また繋がりを作ってみませんか。
 入座してはじめの期間は五月の祭礼を中心とした奉仕となり、上の立場になると年間の祭事や行事に奉仕します。

入座の要綱
◇昭和四十九年から昭和五十五年生まれの男性で、上一乗寺地区にお住まいもしくは実家のある方

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 「宮座」か、懐かしいなあ。高校生の時に、受験日本史で必死こいて覚えた思い出があります。ちなみに「山川日本史小辞典 改訂新版」によると「宮座」とは…

 村の氏神や鎮守神を祭り,神事祭礼を行う村人の祭祀組織。

 ということです。さすがは京都、いまでもしっかりと残っているのですね。しかも家父長制という骨組みを維持しつつ。

 一乗寺駅から叡山電鉄に乗って出町柳駅へ、京阪本線に乗り換えて祇園四条駅に到着。四条大橋を渡って東華菜館へ。まずは少し離れたところから、洒落た外観をじっくりと堪能。派手だなあ。
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京都観光「Navi」から引用します。

 建物はウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計。西洋料理店のため、大正15年(1926)に建てられた。学校や教会建築を数多く手がけた彼の、生涯唯一のレストラン建築であったが、戦時中、洋食レストランの存続が困難になり、北京料理のシェフの手に渡ったことが、東華菜館の始まりとなる。現存する日本最古のエレベーターが有名。スパニッシュ・バロック様式の建築を鑑賞しながら本格的な北京料理が楽しめる。

 ついでに南座も撮影。派手だなあ。
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# by sabasaba13 | 2025-11-02 06:54 | 京都 | Comments(0)