頼れる隣人/危ない隣人

 「ばけばけ」を見た後、NHK-BSの「ワールド・ニュース」を見ています。昨日のニュースで驚いたのは、フィリピンを襲った巨大台風について、ドイツとスペインのニュース番組が詳しく取り上げていたことです。言葉では表現できないような凄まじい台風の威力とその被害に呆然と見入ってしまいました。
 『東京新聞』(25.11.10)から引用します。

フィリピン、台風直撃で2人死亡 140万人避難

【マニラ共同】 フィリピン北部を9日から10日にかけて台風26号が直撃し、同国の災害対策当局は10日、増水や建物の崩壊によって2人が死亡したと発表した。台風接近に伴い各地で計約140万人が避難した。
 多数の土砂崩れの報告があり、全土で家屋約千戸の損壊を確認した。被害状況を調査中で、死者はさらに増える可能性がある。
 フィリピンでは4日前後にも台風25号が直撃し、中部セブ州を中心に200人以上が死亡した。
 今年の台風シーズンでは公共機関や学校の閉鎖が相次いだ。バリサカン経済企画開発相は7日の記者会見で、台風被害による社会活動の停滞が経済に深刻な影響を及ぼしていると指摘した。

 わりとテレビのニュース番組は見ていると自負しておりますが、フィリピンを襲った台風について報道したものを見たことがありません。また日本政府が救助隊を派遣したり、支援物資等を送ったという情報も耳にしていません。アジアの大切な隣人がたいへんな目にあっているというのにメディアも日本政府も知らんぷりですか。冷たいなあ。(違っていたらぜひご教示ください。謝罪のうえ報告します)

 気候危機の影響で激甚な自然災害が激増し、日本、アジア、世界の人びとの命や暮らしを脅かすことが危惧されます。それに対して日本政府は何をするべきか。私の持論ですが、防衛省の廃止および防災省の設置と、自衛隊を改組と国際救助隊「雷鳥」の結成です。日本国内で激甚な自然災害が起きたら即刻「雷鳥」を派遣し、そして同様の事態が起きたらアジアへ余力があれば全世界へ「雷鳥」を派遣する。捜索、救助、治療、スフィア基準をもとにした支援に尽力し、被災者の苦痛を少しでも和らげる。いかがでしょう。

 思考実験をしてみましょう。アメリカのミサイルや戦闘機を爆買いして有事に対してスタンバっている国家と、困ったときにすぐに救助隊「雷鳥」を派遣してくれる国家。あなたはどちらの国家を隣人としたいですか。いろいろな意見があるとは思いますが、私は躊躇なく後者の国家を頼れる隣人としてつきあいたい。そして日本が中心となって助け合いのネットワークをアジアに、やがては世界に広げてゆく。そうすれば戦争や武力紛争に対する抑止力となり、真の安全保障に資すると確信します。ま、アメリカと日本の軍需企業は困るでしょうが。
 というわけで蟷螂の斧ですが、私の提言です。防衛省を防災省へ、自衛隊を国内・国際救助隊「雷鳥」へ、全面的に改組すること。その隊歌は、以前に提案したように「サンダーバード」の歌をそのまま流用してください。

 チャンチャカチャッカチャッカチャカチャカ…
 サンダーバード 青く光る広い宇宙へ 行け風を巻いて
 サンダーバード この世の幸せのために 行け海に陸に
 青い空を乱す者は誰か 呼んでいるあの声はSOSだ
 サンダーバード 青く光る広い宇宙へ 行け風を巻いて

 ただ三つ目のフレーズの後の合いの手は、「プレジデント、ドナルド・トランプ!」「ゼネラル・セクレタリー、シー・チンピン!」「プライム・ミニスター、ウレイアリ・サナエ!」と変えましょう。

 危ない隣人ではなく、頼れる隣人に

# by sabasaba13 | 2025-11-11 07:15 | 鶏肋 | Comments(0)

レディーススーツを着た関東軍と廊下の奥に立つてゐる戦争

 いよいよ日本が戦争をする事態が、現実味を帯びてきました。新聞記事を二つ引用します。

『東京新聞』(25.11.7)
高市首相、武力行使をともなう台湾有事は「存立危機事態になり得る」 中国を名指し 異例の言及

 高市早苗首相は7日の衆院予算委員会で、中国による台湾への侵攻を巡り、「戦艦を使って、武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と述べ、集団的自衛権の行使が可能になるという認識を示した。特定の国を名指しして、自衛隊の防衛出動につながる事態の想定を明らかにするのは極めて異例だ。
 立憲民主党の岡田克也元外相の質問に答えた。首相は「台湾有事は深刻な状況に今、至っている。最悪の事態も想定しておかなければいけない」と指摘。存立危機事態の認定に当たっては、個別具体的な状況を総合的に考慮すると説明した上で、判断基準の一つとして「例えば、台湾を中国が支配下に置くためにどういう手段を使うかだ」と語った。例示として、民間船舶を動員した海上封鎖であれば「存立危機事態には当たらない」と話した。(川田篤志)


『しんぶん赤旗』(25.11.9)
首相「台湾有事は存立危機事態」答弁 米の武力行使加担を認める

 中国が台湾を武力統一する「台湾有事」が発生すれば、米軍の戦争に参戦する「存立危機事態」に該当する―。高市早苗首相は7日、衆院予算委員会で、日本が直接、攻撃を受けていないにもかかわらず、中国に対して米軍とともに武力行使する可能性を明確に認めました。今後の日中関係に大きな波紋を広げる重大答弁です。
 歴代政権は、同盟国の戦争に参戦し、武力行使する集団的自衛権の行使は違憲であるとして禁じてきました。日本が武力行使できるのは、「我が国に対する急迫不正の侵害」の場合に限っていたからです。
 ところが、第2次安倍政権が2014年7月の閣議決定で政府見解を変更し、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合に武力行使が可能だとしました。15年に強行した安保法制には「存立危機事態法」を盛り込み、違憲の集団的自衛権の行使を可能としました。
 では、いかなる場合が「存立危機事態」に該当するのか―これまでの政府答弁では、中東のホルムズ海峡が海上封鎖され、原油が途絶える場合などを例示。台湾有事については明言してきませんでした。
 ところが、高市氏は、立憲民主党の岡田克也議員が「台湾・フィリピン間のバシー海峡の海上封鎖」を例示して見解をただしたのに対し、「(中国による)海上封鎖を解くために米軍が来援する、それを防ぐために何らかの武力行使が行われるといった事態も想定される」と答弁。さらに、「台湾を中国・北京政府の支配下に置くために…戦艦を使って、武力行使も伴うものであれば、どう考えても『存立危機事態』になりうるケースだ」と初めて明言し、「台湾有事」への参戦の可能性を認めたのです。
 台湾住民の意思を無視した「武力統一」はあってはなりません。だからといって、その場合に、日本が武力行使に踏み切れば「軍事対軍事」の悪循環をもたらすことにしかなりません。1972年の日中共同声明で、台湾が中国の領土であるとする「一つの中国」を確認していることとの整合性も問われます。(竹下岳)

 「存立危機事態」とは、「事態対処法」によると、下記の事態です。

 わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態。

 言い換えると、自衛隊による集団的自衛権の行使が可能だと日本政府が判断する事態の呼称です。この段階を認定すれば、日本と密接な関係にある国、つまり米国が戦争を始めた時に日本が参戦することが可能になりました。
 そして高市首相は、日本が集団的自衛権を行使して、米軍の戦争に参戦することがあり得ると明言したわけです。

 その前提となるのは中国による台湾への武力侵攻(台湾有事)ですが、その可能性はどれくらいあるのでしょうか。私は、布施祐仁氏が分析されているように、極めて低いと考えます。アメリカとしては、中国の脅威を過大に言い立てて日本の危機感を煽り、武器を買わせることを狙っていると考えます。
 それよりも懸念されるのは、以前も述べましたが、ヒューマン・エラーやメカニック・トラブルなどによる偶発的に勃発する米中の武力衝突です。両国とも目の玉が飛び出るような巨額の軍事費を使っている以上、国民の手前、弱気な姿勢は見せられないでしょう。偶発的な中米の武力衝突→戦闘のエスカレート→日本政府は存立危機事態として認定、参戦→沖縄を中心に配備したミサイルによる先制攻撃→中国のミサイルによる沖縄さらには日本全土への報復攻撃→「中国の国際的威信を地に落とせた」とロマネ・コンティを飲みながらほくそ笑むアメリカ。こんなシナリオがありそうですね。

 で、疑問なのは、「存立危機事態」を認定するのは本当に日本政府なのでしょうか? 私は、アメリカ政府の指示(Her master's voice)に従って日本政府が認定するのだと考えます。アメリカ政府に指示によって中国を攻撃し、中国からの報復の反撃を受け、とてつもなく大きな犠牲を払わせられる日本。
 そんな地獄絵図が眼前に現出する可能性が高まったのだと考えます。数年後か、数カ月後か、それとも明日か。

 レディーススーツを着た関東軍の暴走が始まりました。ほら、廊下の奥に立つてゐる戦争の姿が見えませんか。

# by sabasaba13 | 2025-11-10 07:00 | 鶏肋 | Comments(0)

おとなしくしろ

 高市首相についてのニュースが氾濫するなか、恐るべき事態が静かに進行していることに留意しましょう。目立ちませんが、とても重要な記事を二つ転記します。

『東京新聞』(25.10.30)
こちら特報部 ビラ配りで突然逮捕「30年やってきたのに」 労働運動への相次ぐ警察介入… 「物言う人を孤立させる」懸念が

 今年2月、駅構内で東芝に賃上げなどを求めるビラを配布した団体のメンバーらが軽犯罪法違反容疑で現行犯逮捕された。長年活動する場所での突然の身柄拘束に関係者は戸惑う。また関西で多くの逮捕者を出した「全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(関生支部)」を巡る国家賠償請求訴訟は31日に判決が言い渡される。ビラまきやストライキが犯罪行為とみなされた二つの事件から、社会運動への圧力が強まる現状を考える。(太田理英子、加藤文)
 2月20日朝、JR北府中駅(東京都府中市)の改札前。東芝府中事業所へとつながる通路上で、同社OBの海老根弘光さん(79)と塩田儀夫さん(75)は、通勤中の社員らにビラを配っていた。
 2人は同社OBや現役社員でつくる労働運動団体「東芝の職場を明るくする会」のメンバー。ビラは同社に賃上げや適正な人員配置を求める内容だった。
 ビラを配り始めてから約1時間後、1人の駅員から「やめてください」と注意を受けた。塩田さんが「公共の空間ではないか」と答えて配り続けると、まもなく制服と私服姿の警察官8人以上に取り囲まれ、中止するよう求められた。
 過去にも警察官に注意されたことはあったが、「こんな人数で来るのは何かおかしい」と海老根さんは感じた。終了予定時間になり、警察官と押し問答をしていた塩田さんに声を掛け、電車に乗るため改札に入ると、警察官たちがどっと追いかけてきた。
 私服警察官は「今日は逮捕するんだ」「身柄を確保しろ」と指示。海老根さんが振り切ろうとすると体を引っ張られ、「抵抗すれば公務執行妨害になる」と考えてうずくまった。
 容疑を聞くと、禁じられた場所などへ立ち入った軽犯罪法違反容疑だという。その場で現行犯逮捕され、2人がかりで運び出されてパトカーに押し込まれた。
 塩田さんも同容疑で逮捕され、2人は府中署で取り調べを受けた。「こんなことで逮捕するなんて。裁判になったらどうしたらいいのか」。海老根さんはそう考えながら、黙秘。会の活動内容などを聞かれた塩田さんは「今後も続けるのか」と問われ、「死ぬまで続ける」と反論したという。
 人権団体「日本国民救援会」から連絡を受けた弁護士が署に抗議し、2人は逮捕から約2時間半後に釈放された。その後、海老根さんは署から供述調書の作成などに応じるよう求められたが、拒否。4月末、2人とも不起訴処分となった。
 「同じビラ配りを30年やってきたのに、なぜ逮捕されないといけなかったのか」と2人は憤る。
 1995年の明るくする会発足以来、退職強要や不当配置などの労働相談、東芝本社や子会社への労働者の処遇改善の要求をしてきた。北府中駅前では毎年、同じ場所でビラ配りをしてきた。今回も含め、通行を妨げないよう、穏やかに活動することを心がけてきたという。
 署は、当時の対応について「管理者の承諾を得ずに、駅利用以外の目的で立ち入った行為」が軽犯罪法違反に当たると判断したと説明。過去のビラ配りと関係なく、あくまで当日の行為が法律に触れたとし、「拘束の必要性があった。逮捕は適法だった」とした。
 これに対し、2人の弁護人を務めた岩村智文弁護士は「短時間とどまっただけで、重大な違法行為が継続した状況はない。身元も特定されており、逮捕は必要なかったはずだ。活動の弾圧だ」と批判する。
 署は2人の釈放後に実質取り調べをしておらず、検察は書類送検から9日で不起訴処分を決めた。「警察は初めから事件にならないと分かっていたのだろう」
 なぜ、警察は逮捕に踏み切ったのか。
 2人が背景にあると考えるのが、5月に施行された、経済安全保障分野の機密情報を扱う公務員や民間人らを身辺調査する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を盛り込んだ「重要経済安保情報保護・活用法」の存在だ。恣意的な解釈やプライバシー侵害の問題が指摘されてきた。
 逮捕は法施行前だったが、東芝は府中事業所などで原子力事業を進めていることを踏まえ、海老根さんは「重要産業を担う企業内で、職場への不満の声が警戒されてもおかしくない」と指摘。「労働運動が敵視され、今後も摘発の標的になるのでは」といぶかしむ。
 塩田さんは、現場が私有地ではあるが「自由に出入りでき、パブリックフォーラム(公共の言論の場)として認められるべき場所」と主張。「他の運動で萎縮が起きかねない」と警鐘を鳴らす。
 労働運動への圧力は近年、強まっている。特に顕著なのが、2018年以降、ストライキなどの活動をした労働組合員らが恐喝や強要未遂などの疑いで摘発された「関西生コン」を巡る事件だ。
 延べ66人が起訴された一方、これまで12人の無罪が確定。644日間にわたり勾留され、京都地裁で無罪判決を受けた湯川裕司さん(52)らが国などに損害賠償を求めた訴訟の判決が、今月31日に東京地裁で言い渡される予定で、捜査の違法性などの判断が注目されている。
 労働運動で逮捕が続く現状をどう見るべきか。JR北府中駅での事件について、立命館大の松宮孝明教授(刑事法)は「(逮捕することに)本来の目的の逸脱、他の目的があったとしたら法律違反だ。警察はそんなことをすべきではない」と指摘する。
 軽犯罪法は4条で、法律の適用にあたり「国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」と規定するからだ。
 同法1条32号の「入ることを禁じた場所に正当な理由がなくて入った者」を適用して逮捕したことに「構成要件に該当するとは思えない」。
 関西生コン事件を含め、「賃上げなど労働条件改善の運動に対する検察、裁判所の理解も不十分だ」とも指摘した。
 ジャーナリストの青木理さんは「警備公安警察が、労働運動や組合運動をする人たちを広範に監視したりする例はこれまでにもあった」とした上で、「ビラを配っただけで逮捕するのは、言論、表現の自由にも関わる労働運動の根幹を揺るがす問題だ。犯罪が発生していないにもかかわらず警察権を幅広く捉えて調査したり逮捕したりすることは、社会の一番大切な草の根の動きをつぶしかねない」と語った。
 関西生コン事件を取材してきたジャーナリストの竹信三恵子さんは「公の場所での行動に対する取り締まりは、最近、頻発している」と危機感を募らせる。
 集会をしたり、ビラをまいたりして労働条件の獲得を広く社会に訴えること自体、団体行動権でも認められているとし、相次ぐ警察の介入に「自由な発言や行動など一般の人々の権利を大きく侵害するものだ」と批判する。
 竹信さんは、戦争をできる国にしたいとか、軍事費に公金を回したいという狙いから、労働者や生活者の声を抑え込む狙いがあるとの懸念を示した上でこう訴える。
 「私たちは今、岐路に立っている。政権の一部の人たちだけで政策判断がされ、賃上げの声も封じ込められ、社会が壊れてしまうことがないよう、物言う人を孤立させないよう皆で支えることが必要だ」
◆デスクメモ
 関西生コン事件でも同じように捜査当局は「今後も活動を続けるか」と問う。有罪にできなくても、逮捕することで所属する労働組合や団体に圧力をかけるのが目的なのか。長年続いた活動を「今日は逮捕する」と判断したのはなぜか。「逮捕は適法」の説明だけでは納得できない。(祐)


『東京新聞』(25.11.1)
結局多数が無罪になった捜査はセーフ、検察官の発言もセーフ… 「関西生コン」労組の訴えを東京地裁が棄却

 ミキサー車運転手らでつくる産業別労働組合の「全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部」や組合員らが、生コンクリート製造業者への恐喝容疑などで摘発されたのは組合活動の不当な弾圧に当たるとして、国などに計約2000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は31日、捜査や取り調べの違法性を否定し、原告の請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
 一連の事件は2018年以降、大阪、京都、滋賀、和歌山の各府県警が組合幹部らを摘発。刑事裁判では起訴された延べ66人中、12人の無罪が確定している。
 大寄麻代(おおより・あさよ)裁判長は判決理由で、逮捕・勾留を巡る警察や検察の判断について、いずれの事件も多数の組合員の組織的な行為が問題になっていたと指摘。「合理的な根拠が欠如していたとは言えない」として違法ではないと結論づけた。
 審理では取り調べの録音・録画が法廷で再生された。大津地検の副検事(当時)が組合員に「どんどん削っていく」などと発言した取り調べを、大寄裁判長は「表現方法が適切だったかは疑問の余地がある」と指摘したものの、「組合を弾圧し、弱体化させる意図を述べたものとは解されない」とした。
 黙秘する組合員に、別の検事が脱退を勧めるような発言をした点も「反省を促し、供述を得ようと説得を試みたものと理解できる」と判断した。(小野沢健太)
   ◇   ◇
 「いい流れだと思っていたが、まさかの棄却。え、なんで、という思い」。判決後の記者会見で、原告で組合執行委員の西山直洋さん(57)はあきれた様子で話した。刑事裁判では、西山さんが被告になった事件も含め、無罪判決が相次いでいるからだ。
 原告弁護団長の海渡雄一弁護士は「多くの無罪判決が出た違法捜査と思われる事件を、公平な立場で判断したとは思えない」と語気を強めた。
 この日の判決は、無罪となった刑事裁判で信用性が否定された証人の供述内容を「信用性に疑問があるとはいえ存在していた」と言及。供述などを基に身柄拘束した警察や検察の判断を違法と認めなかった。海渡弁護士は「無罪判決にけちをつけている。すべて棄却という結論を先に固め、都合のいい事実をつなげたようにみえる」と非難した。
 「黙秘します」と143回繰り返した組合員に、検事らが黙秘の理由や組合を続ける意思を執拗に尋ねたことも、判決は「説得行為」と違法性を否定。弁護団の太田健義弁護士は「なぜ黙秘している人に反省を促す必要があるのか。検察官にそんな権限はなく、このような裁判官の認識は非常に恐ろしい」と断じた。
 捜査当局による「脱退勧奨」と取れる言動に賠償責任が認められなかった判決は、他の労組運動への影響も懸念される。西山さんは「この判断が一般化していくことはあってはならない。最後まで戦っていく」と語った。(太田理英子)

 関西生コン事件については、以前に拙ブログに上梓した記事、『ここから』の映画評、そして京都地裁の判決をぜひご照覧ください。
 ストライキやビラ配りへの弾圧、労働組合の弱体化、警察と検察と司法がぐるになって、企業に立ち向かう労働者を黙らせ、おとなしくさせようという動きです。それも真綿で首を絞めるようにじわりじわりと… メディアもこうした動きを全く取り上げません。
 その背景には、激増した非正規労働者が「関西生コン」労組のような産業別労働組合を結成することを、企業が必死で食い止めようとしている動きがあるのかもしれません。
 しかし、自由民主党、国民民主党、日本維新の会、参政党が「スパイ防止法」の法案提出の準備を進めている状況を見ると、事態はもっと深化したものである可能性も否定できません。政府や企業に抗うもの、現在の秩序を変えようとするものを取り締まろうとする動きです。
 現状から大きな利益を得ている者や組織が、それを死守するためのなりふりかまわない弾圧。それに協力することによって、おこぼれにあずかろうとする警察と検察と司法。それを報道する硬骨のメディアを応援しながら、しっかりと監視していきましょう。

 おとなしくなんかなりません。黙りません。


# by sabasaba13 | 2025-11-09 06:55 | 鶏肋 | Comments(0)

赤坂プレスセンター

 昨日、「赤坂プレスセンターと横須賀基地」という記事を上梓しましたが、赤坂プレスセンターの現状についての詳細な報告がありましたので紹介します。

『東京新聞』(25.8.11)
米軍ヘリは頭上スレスレを通り港区の基地へ 戦後80年の今も残る「特権」… 放置された空と土地の問題とは

 バリバリバリ…。7月17日午前11時過ぎ。犬を連れた人やランナーが行き交う東京都立青山公園(港区)の一角を突然、ごう音が包み、風圧で木々がざわめいた。
 ビルの間を縫うようにして現れたのは「US AIR FORCE」と機体に書かれた白い軍用ヘリコプター。半分開いたドアから軍服姿の男性が銃を携える。米軍基地「赤坂プレスセンター」の地上ヘリポートと隣接するこの一角で日常的に見られる光景だ。
 近くで園児を散歩させていた保育士の女性(66)は「ヘリは頭上すれすれを通った。大きな音が苦手な子もいるので、あわてて『ヘリコプターの音だよ』と声をかけた」と話し、身をすくめる。
 ヘリポートと目と鼻の先にある遊具コーナーや涼しげな木陰は、都心では貴重な子どもたちの遊び場だ。この日の午前だけでも2つの幼保施設が利用した。夕方にはいつも、ボールで遊ぶ小中学生らでにぎわう。女性は「事故が起きないか不安というのが率直な気持ち。こんな所に基地はない方がいい」とつぶやいた。
 記者が本社ヘリに乗って上空から基地を確認すると、異様さはより際立って見えた。六本木ヒルズや国立新美術館などがひしめく都心の一等地に、ぽっかりと広がる約2万7000平方メートルの空間。ヘリポート脇には兵舎なども立つ。
 米軍の準機関紙の事務所があることから「赤坂プレスセンター」と呼ばれている。米軍が1945年に旧日本陸軍の駐屯地だった土地を接収し、今日まで占有を続けている。
 米大使館や外務省にも近く、在日米軍横田基地(東京都福生市など)からの移動に適し、トランプ大統領ら要人も頻繁に利用する。米軍は公式ホームページで、軍関係者や家族が滞在できる基地内の兵舎を紹介し「にぎやかなナイトライフスポットも徒歩圏内だ」と利便性をうたっている。
 基地の問題は、米軍と東京都の間にあつれきも生んできた。日米は1983年、都が米軍ヘリポートの地下に都道トンネルを建設し、工事中は青山公園の一部(約4300平方メートル)を臨時ヘリポートとして米軍に貸し出すことで合意。工事後は臨時ヘリポートを元の公園に戻す約束だった。
 ところが1993年に工事が終わった後も、米軍は臨時ヘリポートを手放さず、利用を継続。1999年に都知事となった石原慎太郎氏も記者会見で「屈辱的な状態が続いている」と不満をあらわにした。交渉が動いたのは2007年。米軍はヘリポートに接する別の土地の返還を提案してきた。
 その土地は、貸している土地より400平方メートルほど広いものの、米軍も使っていなかった基地北端の細長い部分。公園エリアとの接続も悪かったが、都は受け入れざるを得なかった。ヘリポートは返還どころか、逆に拡張されてしまった。
 返還された土地は2023年、遊具つきの芝生広場に整備されたが、米軍の意向により、今でも市民が入れるのは午前9時から午後4時半までに限られる。近くの男性(60)は「暑いので朝や夕方以降に訪れたいのに。なぜ制限が続いているのか」と憤る。
 米軍の「特権」は土地の占有にとどまらない。米軍機は、在日米軍の特権的地位を定めた日米地位協定に基づき、航空法の規制の大半が適用除外されている。日本のヘリなら違法となるような都心での低空飛行も米軍機は日常茶飯事だ。
 羽田空港の着陸機が都心上空を降下する「羽田新ルート」の下を米軍ヘリが通り抜けるため、事故を心配する声もある。今年1月には米首都ワシントン近郊で、米軍ヘリが近くの空港に向かっていた小型旅客機と空中衝突し、67人が死亡する事故が起きている。
 都と港区は長年、事故の危険性や騒音の問題を訴え、基地の返還を求めるが、米国は今年3月、在日米軍司令部を作戦指揮権を持つ「統合軍司令部」へ移行する準備として、防衛省との連携用の部署を赤坂プレスセンターの中に新設した。事実上の基地機能の強化で、恒久化されるのではとの懸念は拭えない。
 中谷元・防衛相は7月の記者会見で「施設の新設や大規模改修、騒音を出す装備品の配備も予定されておらず、基地負担の増加につながらない」と主張。「都心への要人輸送や後方拠点の役割を果たしている施設であり、現時点において返還は困難だ」と容認する方針を強調した。
 港区の清家愛区長は東京新聞の取材に、統合軍司令部への移行について「基地の恒久化につながり、撤去が遠のくことを懸念している」と書面で回答。日米の合意通りに基地の返還が進んでこなかった経緯にも強い不満を示し、今後も返還を求めていく方針だ。
 米軍は都心の空に、さらに広範な問題ももたらしている。1都9県にまたがる空域は日本ではなく米軍が管制を行う「横田空域」。国内なのに進入時は米軍の許可が必要で、民航機の多くは空域を避けて遠回りを余儀なくされている。
 防衛省幹部は「自衛隊機でさえ米軍の許可が要る。屈辱だ」と漏らす。戦後80年でも状況は変わらず、政府が米国に強く返還を求める姿勢は見られない。
 目につきにくく、これまで置き去りにされてきた「都心の基地」と「空の主権」をどう考えるべきか。大東文化大の川名晋史教授(安全保障)は「人口密集地の低空をヘリが飛んでいる。いつ重大事故が起きてもおかしくない」と指摘。「米軍基地や空域の問題は戦争の名残。戦後80年の今こそ、私たちがわが事として考えるべきテーマだ」と問題提起する。(大野暢子)

 首都に厳然として存在する米軍基地、米軍と米軍兵士の傍若無人な振る舞いをあらためて胸に刻みましょう。そしてこうした状況は、沖縄を筆頭に日本各地に存在することも。
 くりかえします。アジア諸国との信頼関係の欠落とアメリカへの従属、その庇護の代償として首都圏を含む全国各地に米軍基地を提供し、日米地位協定により米軍の治外法権的行為を容認する。この現実をまず認めることから始めましょう。
 そして日本の新しいリーダーは、この軍事基地のひとつから喜々として飛び立ち、そのひとつに喜々として降りたち、現状に自発的に屈従していることも。

 追記です。本日の『東京新聞』(25.11.8)でもこの問題を取り上げていました。

<ぎろんの森> 東京都心にある外国軍施設

 高市早苗首相と与野党との本格的な国会論戦が始まりました。就任直後の「ご祝儀相場」もあり、報道各社の世論調査で内閣支持率は60~80%と高水準ですが、衆参両院で少数与党という厳しい状況に変わりはありません。
 国民の暮らしを痛めつけている物価高騰に、適切な対応策を講じられるかどうかが政権の命運を握っています。
 政権発足直後は、米韓中との首脳会談やアジア太平洋経済協力会議(APEC)などでの首脳会議など外交日程がめじろ押しでした。ただ、トランプ米大統領を日本に迎えた高市氏の振る舞いには、賛否両論があるようです。
 本社にも読者から「高市首相がトランプ氏と会い、米空母上で跳びはねて喜んでいたが、はしゃぎ過ぎだ。じっくり考えて行動、発言しないと米国に主導権をとられてしまう」と批判的な意見の一方、「日本は軍事的、経済的に自立しない限り、米国に追随せざるを得ない。国力の差を考えるとトランプ氏のご機嫌をとるしかない」との肯定的な意見も届いています。
 トランプ氏来日であらためて気付かされたのは、東京都心にある米軍施設「赤坂プレスセンター」の存在です。
 東京新聞の過去の記事を調べると、日本の首相がここからヘリコプターに乗ったのは1999年の小渕恵三氏以来です。このときは自衛隊ヘリでした。2002年に完成した新しい首相官邸にヘリポートが併設されたため、この施設を使わなくなりました。
 ですから、日本の首相が、安全保障条約を結ぶ米国とはいえ、都心の外国軍施設から神奈川県・横須賀港に停泊する米空母まで、米大統領とともに、米軍ヘリで移動したことは極めて異例です。
 問題はこの場所が終戦までは旧日本軍の敷地で、東京都や港区が長年、全面返還や撤去を求めているにもかかわらず、米軍に接収されたままだということです。離着陸する米軍機は日本の航空法が適用されず、住民らからは騒音や低空飛行、事故への不安が寄せられています。
 占領時代の名残とも言えるこの場所から、高市氏はどんな気持ちで飛び立ったのでしょう。トランプ氏と良好な関係を築くことで頭がいっぱいだったとしても、この場所が意味するものを決して忘れるべきではありません。(と)

# by sabasaba13 | 2025-11-08 06:48 | 鶏肋 | Comments(0)

赤坂プレスセンターと横須賀基地

 トランプ大統領と高市首相が大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」に同乗をして、特別な親密さを演出したことが話題となりました。しかし、このヘリが、赤坂プレスセンターから飛び立って横須賀基地に到着したことに着目したメディアは、管見の限りありませんでした。
 この両者は言うまでもなく米軍基地、しかも首都および首都圏にある米軍基地です。他国の軍事基地が首都圏に存在する、これは国際的常識ではあり得ません。それなのに何故、日本では横須賀、横田、厚木、座間といった首都圏を制圧するような米軍基地が置かれているのか? 考えるに値する重要な問題です。それについて考えるヒントとなる一文を紹介します。『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部宏治 集英社インターナショナル)から引用します。

 このようにドイツはさまざまな努力の結果、『国際連合憲章逐条解説』にあるように、すでに1970年代、「敵国」としての位置づけを事実上、脱することに成功していました。そうした歴代の首相たちの努力があったからこそ、第六代首相となったヘルムート・コール(キリスト教民主同盟)は、冷戦終結のチャンスをとらえて1990年9月12日に、「ドイツの戦後処理に関して責任をもつ」戦勝四カ国(米英仏ソ)と東西ドイツのあいだで事実上の「講和条約」(通称「2プラス4条約」)を結び、敗戦国としてのなごりをすべて清算することができたのです。そして翌月10月3日のドイツ再統一、さらには1993年11月1日のEU創設へと突き進むことができたのです。
 1990年に結んだ「2プラス4条約」にもとづき、米英仏ソの駐留軍はすべて1994年までにドイツから完全撤退していきました。現在ドイツに残っている米軍は、基本的にNATO軍としての制約のもとに駐留しており、そのドイツ国内での行動にはドイツの国内法が適用されています。
 こうして日本と同じく第二次大戦の敗戦国だったドイツは、長く苦しい、しかし戦略的な外交努力の結果、戦後49年目にして、ついに本当の意味での独立を回復することができたのです。
 それにひきかえ日本は、ドイツのように周辺諸国に真摯に謝罪し、「過去の克服」をおこなうのではなく、戦後まもなく成立した冷戦構造のなか、米軍基地の提供とひきかえに、外交と安全保障をすべてアメリカに任せっきりにして、国際社会への復帰をはたしました。講和条約に通常書かれるはずの敗戦国としての戦争責任も明記されず、賠償金の支払いも基本的に免除されました。そして過去に侵略をおこなった韓国や中国などの周辺諸国に対しては、贖罪意識よりも、経済先進国としての優越感を前面に押し出すようになり、戦後70年のあいだ、本当の意味での信頼関係を築くことが、ついにできませんでした。
 その結果、日本は世界でただ一国だけ、国連における「敵国」という国際法上最下層の地位にとどまっているのです。日本全国に駐留し、国内法を無視して都市の上空を飛びまわる在日米軍がその証しです。いまだに軍事占領がつづく沖縄と、横田、厚木、座間、横須賀など、首都圏を完全に制圧する形で存在する米軍基地、そして巨大な横田空域(ラプコン)がその証しです。そんな国は世界じゅう探しても、日本以外、どこにも存在しないのです。
 アメリカに従属していれば、その保護のもとで「世界第三位の経済大国」という夢を見ていられます。しかし、ひとたびアメリカから離れて自立しようとすれば、世界で一番下の法的ポジションから、周辺国に頭を下げてやり直さなければならない。それはまさに戦後の西ドイツが歩んだ苦難の道そのものです。
 いまさらそんな大変なことはやりたくないし、そもそもどうやっていいかわからない。だから外務省が中心になって、米軍の駐留継続をみずから希望し、ありもしない「アジアでの冷戦構造」という虚構を無理やり維持しようとしている。それが現在の「戦後日本(安保村)の正体」なのです。(p.242~2)

 もう言葉もありません。アジア諸国との信頼関係の欠落とアメリカへの従属、その代償として首都圏を含む全国各地に米軍基地を提供し、日米地位協定により米軍の治外法権的行為を容認する。この現実をまず認めることから始めましょう。
 そして日本の新しいリーダーは、この軍事基地のひとつに喜々として降りたち、現状に自発的に屈従していることも。

# by sabasaba13 | 2025-11-07 07:04 | 鶏肋 | Comments(0)